最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)1830号 判決 1953年8月18日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人及び弁護人平林庄太郎の上告趣意は、末尾添付の書類記載のとおりである。
被告人の上告趣意は、事実誤認の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
弁護人平林庄太郎の上告趣意は、憲法三一条違反を主張しているけれども、その実質は単なる訴訟法の違反を主張するに過ぎないので採用することができない(原判決に「資料」とあるのは「証拠」と同一の趣旨に解すべきであって原判決には所論の違法はない)。
なお、論旨中には憲法三七条違反の主張もあるけれども、原審で所論検証及び証人尋問の決定がなされた公判期日には、被告人並びに弁護人が出頭していたので右検証及び証人尋問の行われる日時、場所等は被告人並びに弁護人に判っていたのに拘らず同人等はこれに立会わなかったに過ぎないのであるから、かかる場合には被告人の前記憲法上の権利保護に充分な機会を与えたものということができることは、昭和二五年(あ)六四一号同二七年二月六日言渡当裁判所大法廷判決の趣旨に徴し明らかである。それ故論旨は採用できない。
よって、刑訴四〇八条一八一条に従い、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)